ハイエントロピー合金に関する研究


2023年 12月15日
2024年 7月 4日

関西大学システム理工学部 
電気電子情報工学科 

超高周波工学研究室 
教員 佐伯 拓

物理・応用物理学科
教員 稲田 貢


ハイエントロピー合金(HEA)に関する研究が盛んに世界で行われている。
HEA: 5種類の原子が混合した合金を指す。しかし、現状ではこの分類は異なるかもしれない。
数を上げれば暇がないほど多くの合金の製作例、及び、論文での報告例がある。

用途の用途として、高耐熱材料、触媒、等があげられる。
高温状態で金属硬度と柔軟性を維持できたり、長時間安定な触媒への応用が期待される。
カクテル効果が期待される。


合金の製法として、従来からある方法では、異種の金属を一度高温にし、急速冷却することで、合金が得られる。しかし、合金化するのは一部である。

我々は、液中レーザーアブレーション法の技術を持っており、レーザーを使ってnmオーダで近接する多種異種金属原子を持つ合金の開発に成功した。
その前段階として、真鍮の粉末を用いた擬似的なHEAの開発に成功した。
Cu/Zn 合金ナノ粒子を市販の真鍮微粒子を原料として高強度・高繰り返しパルスレーザーを液中で照射、乾燥させると大量の合金ナノ粒子が得られる。

それをペースト化し、260度で数分焼成するのみで短時間・低コストで容易に合金が得られる。
TEM EDS やSEM EDSを使用し構成される原子の空間でのマッピングを観察したところ、焼成された合金全範囲にCuとZnがほぼ一様に数nmオーダで分布していることが明らかとなった。この様な非常に特殊な合金を作製できたのは知る限り初めてである。

数cmオーダの合金作製は可能である。
同上の方法で異なる原子の数を増やし、HEAを合成する手法を確立することに成功したこととなる。



焼成Cu/Zn 合金板の1例


参考文献
Taku Saiki, Mitsuru Inada
“Production of Cu/Zn Nanoparticles by pulsed Laser Ablation in Liquids and Sintered Cu/Zn Alloy” J. of Nano. Res. (2024) in press.