若手研究者へ 将来への道しるべ 大学教員・研究所職員かかわらず。
阪大レーザー語録 誰が言い出しかは?ですが、以下にまとめておきます。
○がんばらない人間は放置しておけ。
阪大レーザー研で激光12号を立ち上げた時期での話です。研究所内での記事の内容です。
研究で頑張り成果を出す人はさらに頑張るし、最初からあきらめて頑張らない人はとことんがんばらない。それを無理にがんばらせても無駄である。頑張っている人は、がんばらない人に構うことなく放置しておくべきである。
注意ですが、これには学生指導は含まれていません。
○低い方には合わせるな。
人生、色んな人と接する機会があります。その中では、努力しつづける向上心の高い人もいるが、努力しない向上心の低い人もいる。その人はすぐ隣の”友人”や”結婚相手”かもしれません。親族の中にも足を引っ張る”敵”がいます。本人らには悪意はないのでしょうが。
数々のイベントへのお誘い、普段の生活習慣、家事分担の考え方、遊びに行く、ウインドウショッピング、オンラインゲーム、飲み会、等。人生いろいろな誘惑や時間の浪費があります。どんどん時間を浪費し、それが当たり前になっている。最近、本で読んだ”時間泥棒”でしょうか。
彼らとは価値観に埋めることのできない根本的な相違があります。
経験上、文系と理系の考え方の違いについて、大学のサークルに所属していていやほど思い知らされました。
如何に楽をして人生を楽しむかというのが文系で、あらゆる場面で努力が必須なのが理系で、人生における価値観が根本的に異なることを思い知らされました。その時、話合っても平行線となるだけで、理解し合えることは決してありませんでした。
その価値観の違いは、もちろんその人の才能もありますが、今まで育ってきた環境に大きく依存するので、低い向上心を大人になってから変えることは容易ではありません。結婚前に、後後低い向上心を持つパートナーの考えを話合い(教育)で変えることができる、と考える人は大変甘いです。今まで努力してこなくてその人の結果があります。向上心があるかどうかの1つの目安・判断基準としては、学歴があります。良ければ努力し、悪ければ努力しなかった証拠だと考えます。あせって判断してしまった、では後悔先に立たずです。見極めが大切です。
時間は有限で貴重です。その”意識が低い人”には、決して合わせるなということです。
低い方に合わせると、自分が苦境に立たされ、最後に一生後悔するような結果を得ることになります。
誤解のないように言いますが、つながりを全くなくしたほうが良い、ということでなくバランスの問題です。
研究時間をどうやって稼ぐか、特に、文系でなく理系の研究職ではこれが課題となります。
現実の評価は本当に厳しいです。男性も女性も基本的に区別はなく同じ土台に乗せられ評価されます。
自分は○○だから、という言い訳は通じませんので。
研究職は片手間で勤まるようなものではありません。
一般の人は、研究職というものがどういうものか理解できていません。勘違いしがちです。
回りに同じ境遇の人がいなければなお更理解されません。
時間を有効利用する1つの方法として、先輩から時間をお金で買えと教えられました。
例えば、1例として、食事は自分は若い頃にアルバイトで修行したので難なく作ることができます。でも、作るのは結構時間の無駄です。それが毎日繰り返されると大きな時間ロスになります。論文が数倍書ける時間でしょうか。忙しい時は時短のため食事を買う、とか、外食を頻繁にします。
これはあくまでも一例ですが。
とに角、一般とは考え方を変えなければなりません。
”目先の利益にとらわれるな”。
長期計画を立て、最後に勝てる作戦を、です。
○努力の”貯金”をする。
人とは異なる努力、人より多く努力をし続け、それが貯まると良いことが起こるということ。
1例として、人とはかけはなれた超人的な努力を成し遂げられるなら東大に合格できる、と聞いたことがあります。
長期間努力できる能力というのは、研究者にとって1つの必須の才能と考えます。
○勉強できるのは若いうち。
ほんとに最近思いますが、勉強できるのは学生のうちです。
なかなか仕事をしたりしていると勉強時間は確保できません。
勉強は裏切りません。
○世界を相手に戦う。
目標は高く設定したほうが良い。日本で1番でなく世界で1番です。
○研究の良し悪しは50%がテーマ選定で決まる。
研究テーマの設定が非常に大切である。最近良くみかけるが、すでにだれかが行っている流行の研究をほぼ真似て実行可能な研究テーマを設定したがることがあります。
また、研究テーマについての検討時間が極端に短い場合があります。本来、ここに長い時間をかけるべきなのですが。
誰もやっていない研究をすべき。特に、若いうちからチャレンジすべき。
○研究で初期値が大切。
阪大M学生になりたての頃に聞いた話です。
何か時間発展のある物理の数値計算があったとする。その数値計算の結果は、大きく初期値に依存する。初期値が小さければ後々の値も小さくなる。反対に、初期値が大きければ後の計算結果も大きくなる。
ここで言っている意味は、ただの計算結果のみでなく研究の時間的な進展のたとえです。最初にしっかり研究に関して努力しておけば途中で放っておいても大きな成果が得られるという意味です。逆に、若いうちに誘惑に負け目先の利益にとらわれ研究をおろそかにし論文数が少ないと後々後悔することになるということです。
特に、博士号を取った後、28歳から35歳ぐらいまでが非常に大切です。この年齢の期間、研究をを如何に頑張るか、論文を積み上げるかがその人の将来を決めます。
今なんて言わないでそのうちぼちぼちやればいいという人がいますが、そのような人は研究職に向いていないと自覚してください。そのような人は今までの経験上、業績がないため条件が良い大学の公募があっても応募もできず、またその所属先で昇進できなくなり干されています。40から50才台、苦境に立たされています。
アイデアが他のグループに先に論文化され論文が書けなくなり、どんどん苦しい状態となり、全くの悪循環に追い込まれていきます。
研究者にとって論文は糧であり、若いうちに多く書いておくと、1)書き方に慣れる、2)まとめる力がつく、3)全体を見渡す力がつく、4)研究内容が広がり、等、後々多くの論文執筆につながる、という意味です。
論文を書けば書くほど色んな能力が身に付き状態が良くなるということです。
林先生の言葉、”いつやるんですか?今でしょ”、と同じ意味です。
何でも問題を先延ばしにするのでなく、すぐに解決しておくことが大切です。
それが自身の将来の運命を良い方向へ進めることにつながります。
○博士号は車の免許と同じ。
博士号の習得は、車を運転しても良いという免許証と同じということです(中井貞夫 談)。
博士号は人生のタイトル(飾り)か?そこから研究者としてスタートするか?人それぞれ考え方が違います。
決して、ドイツのマイスターのようにその筋に秀でた能力を持っているという証明ではないということです。
博士号を得た時点では指導教授の影響が大きく、右も左もわからないはず。
○同じ分野で研究を5年もつづければ、大家になる。継続が大切。
研究が開始されて、初めはあまり良い結果が得られないかもしれない。
そこであきらめずに5年は同じテーマを継続したほうが良い。
○オリジナリティーが大切。
研究とはそういうものです。勉強とは違います。
研究にオリジナリティーがあるということは、競争相手が少ないブルーオーシャンでの競争をするということです。
競争の多いレッドオーシャンよりも有利ということです。
○自主性が大切。
人に言われて物事を進めるのでなく、自分から発案し進んで行うことが大切である。
○指示待ち人間はいらない。
だれかに言われて動く指示待ちロボット人間を量産しても日本のためにならない。
大学は職業訓練学校ではない。
○情けは人のためならず。
困っている人には温情をかけて助けるべからず。それが本人にとって良くない。本人の実力が大切。
基本的に問題は自分で乗り越えていくべき。ヒントは与えても良い。
○物事に細かいほうが研究に向いている。
細かい性格のほうが、よくものごとに気づき研究職に向いている。
研究はささいな日常の疑問・解決の積み重ねです。
○働きアリの話。
働く人を集め、組織を分割してよく働く人のみにしたとしても、その後、分割された人の中で働くものと働かない人に分かれる。
○研究者の育成に関して。
実際、優れた能力を持つ研究者は、自ら進んで学習・研究を進め、誰からの指導も必要とせずおのずと成長するものである。ただし、外からの補助は必要である。
博士号を取って、そこが終着点でなくスタート地点である。
博士号をもらえるとは、それなりの能力を持っているということです。
基本的な勉強ができているのはあたりまえである。国立大学を出ていたら中学・高校で成績が1番というのは多くいる。
そこからさらなる成長が必要ということです。
考え方として、リーダーとなる可能性を持つ人材を集め、成長具合を観察し、その中から才能のありそうな人をピックアップして育成していくべき。
○研究に必要なもの 人、物、金
お金は天からふってくる。
地の利
人材は宝。
○どちらが主で従か。
どちらが主役でどちらが補助役なのか。
頭が複数あるのはだめ。
○才能か努力か。
山中千代衛先生が皆を集めて、こう言いました。
この中に自分が才能があると思う者はいないか?手を上げなさい。その時、だれも手を挙げなかった。その後、自分に才能がないと思うものはひたすら努力するしかない、とおっしゃいました。
努力が勝るか才能が勝るか。私は、ケースバイケースだと考えます。どちらともいえないと。
でも、個人個人で才能(givenギブン)の差はあると考え、能力全体のうちの数%の違いが研究でも大切だと思います。サッカーと同じです。サッカーなんか見ていて動きで違いが分かります。サッカーの”うまさ”はIQに比例すると。
才能があるかどうかは結果が証明してくれる。
あるプロ野球選手がスランプに落ちいったと。結果が出るかわからないが10年バットをふりつづけた。それで、だめだったら最後に才能がなかった、と初めてわかる。
物事にあたっているときは、才能があるかどうかなんで分からない。
○失敗する人の行動
負ける人、失敗する人というのは、はたから見れば負けるよう、失敗するように動いている。
人間頭の良し悪しがありますが、学校でのテストの結果が良いのと仕事上成果を上げれるのは異なるということ。
いくら頭の回転が早くても、行動の選択ミスをすると良い成果は得られない。
パソコンの処理速度がいくら速くてもOSがしっかりしていないとだめなのと同じ。
下手な考え休むと同じ。
人間の頭も同じ。
○木を見て森を見ず。
若い人がよくやってしまう癖です。与えられた自分の研究だけ集中して見てしまい、その他の人が行っている研究を考慮しない。
。木は、実際は広い森の中にあるが、木だけ見ていることにたとえている。
もっと、視野を広げろということ。
他にも通じます。
○人生は選択の連続である。
よく言われる言葉。そのとうりです。
また、選択肢がそれしかない、と思い込んでいる、思い込まされていることに気づかない人もいる。
実際には選択肢が複数あることに気づかない人もいる。
○引き出しの数を多くする。
○人が入れ替わるのは良いことだ。
○自分に自信を持つべき。
○話す言葉の単語数でその人のIQが分かる。
多くの言葉を使って会話をする人はIQが高い。IQは話す言葉の数に比例する。 アメリカ大統領の演説の話。
○まとめることが大切。
○敵の技術を取り込む。
○継続は力なり。
○研究者の評価として、論文の質も大切だが、優先されるのは数である。
高インパクトファクターの雑誌に論文が掲載されるのは良いことだが、それだけでは研究者の能力の判断が難しい。
研究者の評価は、やはり、論文数で決まる。
○研究の良し悪しはどれだけ物理が含まれているかで決まる。
その研究にどれだけの物理が含まれているか、それで良し悪しが決まる。
○四六時中、その研究のことで頭がいっぱいになるか。
良い研究テーマである条件です。
○どんなわからずやでも最後まで説明をすべき。
○大切なことや実現したいと思うことは自分で行う。
他人まかせでは進まなく実現しない場合がある。
本当に実現したいと思うなら自分で実行するべき。
○その組織にかけがえのない技術・能力を持っているか。
その組織の中で、自分だけしかない技術や能力を持っているか?
すぐに他人にとってかえられる技術では存在する意味がない。
それを持っていて必要とされていたらリストラにも強い。
○その筋の専門家になる。
○何が大切か?
ものごとの優先順位。
2兎を追うものは1兎も得ず。
○全ての原因は、その人の力不足にある。(白い巨棟)
○分かったふりをしない。
○考え続けアイデアを貯金する。
研究のスタイルには、実験を繰りかえして成果を出すタイプと、考えて行動して成果を出すタイプがある。
いろいろ議論がありますが、物理系なら後者でしょう。いきなり行動しないで、よくよく考えてから動くこと。研究ではこれが大切。
それらのアイデアは自由帳などのノートに書き溜めておくこと。これが、多くの研究成果につながります。
○研究テーマが人を育てる。
筋の良い研究を行なっていると、その人が良く成長する。だから、筋の良い研究テーマを選定することが大切。
○要素分解する。
1見、どんな難しく複雑に見える問題でも、全ては個々の要素の組み合わせである。
1個1個分けて考えると問題が解ける。
○徒手空拳でとうやって戦場で戦え、生き残れというのか? (山中千代衛先生の口癖)
我々は、戦後生まれですから、戦争の経験はありません。しかし、おじいちゃんおばあちゃんの、中国(満州)での活動、空襲などの話を聞かされてきましたので、すこしぐらいは想像できます。戦前の人の生活は大変だったんだな、と。
現在の研究の話に戻りますが、戦前の日本人が持っていた精神論だけでは現在は生き残れないということです。
何か自分の得意な武器(研究分野)を身につけろ、ということです。
身に着けている技術が他の人と同じ、では武器にはなりません。
○研究成果が出る匂いがしない。
ある研究が進められている。研究が進められていて、データが出始めた頃、その良い結果が得られる手ごたえの様なものを感じるはずである。前に手ごたえのようなサインがあって、その後大きな結果が得られる。それが出てこないということは、そのアプローチが間違っている可能性が高い。
別の見方では、研究者の手腕(能力)があまり良くないとも考えられえる。