変換効率
変換効率とは、太陽光の全スペクトル成分に対するレーザー光への変換効率を指す。
従来理論であると、この変換効率の限界値は40数%である。米国のSSPS研究者も同様のことを言っている。
しかし、研究が進むにつれその見解は変化しつつある。
Nd/Cr:YAGセラミックレーザー媒質がクロス緩和効果を生している可能性が高いデータが得られている。クロス緩和とは、Tm、Er:YAG、ファイバーレーザー等で生ずる現象である。クロス緩和とは、励起光を吸収して、上準位に緩和する際に、別のイオンを下準位から上準位に励起する現象である。要するに、1光子吸収−2光子発光が生じ、量子効率が改善されて効率が上がる、ということである。しかも、変換効率に熱が関与しているようである。
現在の見解では、変換効率の上限は40%でなくさらにもっと高い。
それに関しては出版される論文を参照されたい。
これが明らかになる最初のきっかけは、2005年に阪大で行ったNd/Cr:YAGセラミックレーザーの高温動作試験であった。1人の学生(今は就職している)が、セラミックの背面にヒータを取り付けレーザー小信号利得の計測を行っていた。
通常、レーザー小信号利得が温度上昇とともに減少していくことが当然である。しかし、その学生は励起強度が高い場合に、レーザー小信号利得が温度上昇とともに大きく増加していくデータを持ってきた。
研究会議では、そのとき、計測がきっと誤っているのだろう、という先生方の結論になってしまった。筆者はそのとき誤りであるとは考えなかった。付き添いで実験を見ていても、とても計測そのものがおかしいとは考えられなかつたからである。筆者は、”それは、今は解析できないが、きっと将来何か明らかになるだろう”、といって、その時、データを封印した。その後、2、3年後にそれが重要なデータであったことに気がついた。
先ほどのリテラシーの話であるが、もしこのときに”誤りである”と勝手に判断していたら、フォノン補助クロス緩和は他の人に発見されていたかもしれない。これも、教訓であろう。