高温動作特性
レーザー媒質が通常高温となると、たいていのレーザー装置の出力が低下する。
ここで言っているのは、励起で生ずる熱レンズによるレーザー出力の低下でなく、
本質的なレーザー媒質の性質の悪化である。
媒質温度が低下すると、4準位レーザーであれば、基底準位からの熱励起により、下準位のボルツマン分布に変化が生じて、3準位系レーザーへと変化する。このとき、レーザー利得を決める誘導放出断面積、蛍光寿命の低下が生じて、レーザー利得の大幅な低下が生じ、レーザー光を増幅する力が弱まる。
低下の原因
導放出断面積 => 蛍光スペクトル形状が広がりピークが低下
蛍光寿命 => 下準位分布増加による反転分布の減少
温度上昇を防ぐため、たいていのレーザー装置では、水、空気等の冷媒によるレーザー媒質の冷却を行っている。
しかしながら、その常識が通用しない媒質もある。
アレキサンドライトレーザーとこのNd/Cr:YAGセラミックがこれにあたる。
Nd/Cr:YAGセラミックでは、200度近い高温でのレーザー動作が可能である。
上手に設計すれば、冷却の必要ないレーザー装置が可能である。